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黒魔術の儀式と呪文

実際の魔術儀式ではどのようなことが行われ、どんな呪文が唱えられるのか、そのほんの一端をご紹介いたします。

悪魔を使役する書〜ゲーティア

『ゲーティア・ソロモンの小さき鍵』という書物があります。これは中世期のヨーロッパで著され、その後、アレイスター・クロウリーの編集によって広く世人に知られるところとなった悪魔召喚の魔導書です。そこには伝説の王・ソロモンによって使役された72体の大魔王についての紹介と彼らを召喚する具体的方法などが書かれています。

黒魔術書の類は数多くありますが、中には伝承的なまじないの域を出ないものもあり、正統的な魔術師の教科書として通用するのはほんのわずか…。ゲーティアはその数少ないもののひとつです。

以下にその魔王たちの名前を異界での階位別に列挙いたします。重複した名もかなり出てきますが、これもまた原典通りに記します。

地獄の王位にある者たち
バエル、パイモン、ベレト、プルソン、アスモダイ、ヴィネ、バラム、ザガン、ベリアル
公爵位にある者たち
アガレス、ヴァレフォル、バルバトス、グシオン、エリゴス、ゼパル、バティン、サロス、アイム、ブネ、ベリト、アスタロト、フォカロール、ヴェパル、バール、クロセル、アロセス、ムルムル、グレモリィ、バァプラ、ハウレス、アムドゥシアス、ダンタリオン
王子および大僧正
ヴァッサゴ、シトリ、イポス、ガープ、ストラス、オロバス、セーレ
侯爵位にある者たち
サミギナ、アモン、レライェ、ナベリウス、ロノヴェ、フォルネウス、マルコシアス、フェネクス、サブノック、シャクス、オリアス、アンドラス、アンドレアルフス、シメイエス、デカラビア
地獄の総裁
マルバス、ブエル、ボティス、マラクス、グラシア・ラボラス、フォラス、ガープ、マルファス、ハゲンティ、カイム、オセ、アミィ、ザガン、ヴァラク
伯爵位にある者たち
ボティス、マラクス、グラシア・ラボラス、ロノヴェ、フルフル、ハルファス、ロイム、ブネ、ビフロス、アンドロマリウス

現代日本における悪魔といえば、コミックやゲームなどに登場する架空の存在に貶められていますが、じつは彼らは皆、確固たる意志を持つ霊的実体です。またキリスト教の歪んだフィルターを通されて「悪魔」という蔑称に甘んじてはいますが、本来は精霊の王とでも呼ぶべき存在なのです。

もちろんアルテミシアが執り行う様々な魔術の強力な協力者でもあります。

魔術儀式のあらまし

ただ呪文を唱えるだけでは魔術を成功させることはできません。儀式を行う日取り、時間、目的別の魔法陣の形などが細目に渡って厳しく定められており、それらの条件が総て揃い、なおかつ、それを執り行う者が魔術師として十分に修練した者である場合にのみ、本物の精霊が出現するのです。

たとえば召喚の儀式を行うに際しては、以下のような細かい決まり事があります。

  • 魔術師は儀式を執り行うに当たって適切な月齢を知らなくてはならない。
  • 儀式に最適な月齢の日付は、二日、四日、六日、十日、十二日、十四日である。
  • 召喚する精霊の紋章は必ず金属で作らなくてはならない。
  • 王位にある精霊に対しては金、公爵には銀、大僧正には錫、騎士には鉛、総裁には水銀、伯爵には銀と錫を同等に混ぜた合金を用いる。
  • 各々の精霊を呪縛できる時間帯も、それぞれ限られている。
  • 王位にある精霊は午前九時から正午の間と午後三時から日没まで。
  • 侯爵位の精霊は午後三時から午後九時まで、あるいは午後九時から夜明けまで。
  • 公爵は晴天の日の夜明けから正午まで。
  • 大僧正は夜明けから白昼。
  • 騎士は夜明けから日没、あるいは午後四時から日没まで。
  • 総裁は夕刻と真夜中を除く時間帯。
  • 伯爵は白昼であればいつでも呼び出せるが、森の内部など他人が入り込まない場所で儀式を執り行わなくてはならない。
  • 魔術師はソロモン王の魔法陣を描いてその内に立ち、精霊の攻撃から身を防ぐ。
  • さらに金もしくは銀で作られたソロモンのペンタグラムをペンダントとして胸に飾る。
  • その他、杖(セプター)、剣、司教の冠、杯を用意し、亜麻布で作られた白い法衣を着用すること。
  • 儀式の直前には真水で沐浴し、香油を用いて両眼を聖別する。
  • 沐浴の際は沐浴の祈り、法衣を着る際には着衣の祈りを唱えなくてはならない。また、儀式の場には香炉を置いて香を焚く。

召喚魔術における呪文の一例

精霊を召喚する呪文(ゲーティアより一部のみを簡略して抜粋)

「我は汝を召喚する!ああ、バールよ。天の王よりいただいた力を込めて汝に命ず。ベララネンシス、バルダキシンスス、パウマキア、アポロギアエ・セデスによって、最も強力なる王子ゲニィ、リアキダエ、およびタタールの住処の司祭によりて、また第九の軍団におけるアポロギアの第一王子によりて…………ああ、汝、精霊バールよ、我は汝に命ず。言葉を口にすればただちにその命令を成し遂げられん御方によりて、またすべての神々の名によりて、またアドナイ、エル、エロヒム、エロヒ、エヘイエー、アシェル、エハイエー、ツァバオト、エリオン、イヤー、テトラグラマトン、シャダイ、至高の主なる神の名において汝を浄め、全力を込めて汝に命ず。…………我が命令の通りに成し遂げよ。我が求めに応じて可視の姿となり、従順として我に語れ……」

日本語で唱えられた儀式魔術の呪文が果たしてどれだけの効果を持つのかについては議論の分かれるところですが、アルテミシアによれば「いかなる言語にて唱えられたとしても、その意が通じれば精霊は発動する」とのことです。 ゲーティアには日本語に訳された出版物も出ていますので、興味のある方はこの召喚魔術にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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